外来種シンポジウムを開催しました。五箇公一氏講演のまとめ

昆虫食倶楽部

2018年03月03日 21:54

みんなのはままつ創造プロジェクト2017採択事業
【とって食べる】 by昆虫食倶楽部

外来種シンポジウム
外来種って悪者なの? 生物多様性ってなに?

を開催いたしました。(2018/01/20)




私たちに様々な恵みをもたらしてくれる生物多様性と、それを脅かす原因の一つとなっている外来生物問題について、参加者の皆さんと一緒にじっくり考えるイベント


前半は、外来生物対策の専門家、国立環境研究所の五箇公一さんにご講演いただきました。

外来生物を駆除することによって守るべき生物多様性とは何なのか、その解説から始まり、国立環境研究所での研究結果や、実際の防除活動の最新情報まで、内容盛りだくさん、超早口のマシンガントーク

かなり専門的な内容も多かったと思いますが、多くのイラストや図表を使いながらとても分かりやすくお話いただきました。

また、随所にユーモアを盛り込み、笑いの絶えない1時間でした。




印象に残ったエピソード中心にまとめてみました。


生物多様性を守ることはエコというよりエゴ

この言葉だけを聞いたらびっくりするかもしれませんが、こういうことです。
私たち人間は、水、空気、食料、エネルギーなど様々な恵み、機能を生態系からうけとって、初めて生きていくことが出来ます。これを「生態系サービス」と呼びます。
その生態系は、生物多様性が基盤となって安定的に維持されています。
生物多様性は人間が生きていくために必須なものなのです。

生物多様性を守る活動は、かわいい動物やきれいな植物を守るといったことにとどまらず、またその生き物が好きとか嫌いとかにも関係ない。
我々人間が生き残っていくためのエゴイスティックな活動と捉えたほうが実態に近く、生物多様性をより正確に理解できるという訳です。

そして単純に生き物が多ければよいというわけではなく、地域の固有性がとても大切であることに注意したいです。


アライグマの増加がもたらす「見えにくい」リスク

特定外来生物に指定されているアライグマは、浜松でも生息数を増やし、問題になっています。農業被害や人家近くでの糞尿のことなど様々な問題が起きてきていますが、さらに別の「見えにくい」リスクがあるといいます。

アライグマは狂犬病を媒介することが知られています。
日本では狂犬病は今は発生しておらず、日本にいるアライグマからも狂犬病ウイルスは見つかっていないそうです。

ですが、隣国の中国やインドは今でも狂犬病がかなり発症しており、グローバル化にともないそのウイルスがいつ日本国内に入ってきてもおかしくない状況です。
もし入ってきたときに狂犬病を媒介するアライグマが国内で街中まで生息域を広げていて、人間の生活のすぐそばで生息している状況は、狂犬病の観点からとてもリスクが高い、とのことです。


ヒラタクワガタの遺伝的固有性の危機

現在ペットとしてクワガタムシがとても人気で、外国産のクワガタムシが大量に輸入されています。
ペットとして最後まで飼えばよいのですが。。。
飼えなくなって逃がしてしまったり、意図的ではなくても逃げられてしまうことは、起こりえます。

日本は島国であり、例えばヒラタクワガタは島ごとに11の「亜種」があります。そこに外国産のヒラタクワガタは入ってきてしまうとかんたんに交雑してしまう、つまりヒラタクワガタの遺伝的な地域固有性が失われてしまうかもしれないということです。

DNAを調べるとその遺伝的な固有性は520万年という長い時間をかけて作られてきたものだそうです。
レアでかっこいい外国産クワガタムシを飼うことは、520万年の歴史が一瞬のうちに消えてしまうリスクと隣り合わせにあるのです。

ペットは飼い始めたら責任を持って最後まで(死ぬまで)飼いましょう。
それと同時に、ペットとして需要があるといえども、海外産の生物を輸入できてしまう状況についても一度しっかり考えてみる必要がありそうです。


アルゼンチンアリの防除成功の事例

生物の防除方法は大きく分けて3種類あります

①物理的防除 
網や罠等で直接捕まえる方法です。最もシンプルでリスクが少ないですが、生物の密度が低くなるとそれ以上捕まえるのが難しくなる欠点があります。

②生物的防除
天敵になる生物を導入する方法です。これは効果が不安定な上に、導入した生物が野生化してしまうリスクがあります。沖縄でのハブに対するマングースが失敗例。

③化学的防除
薬剤を散布する方法です。薬剤の使い方を間違えなければとても効果が高いです。

このうち③の化学的防除を使って成功したのがアルゼンチンアリの防除で、その考え方や方法について具体的にお話していただきました。

ポイントは、対象生物の生態を事細かに調査し、それ合わせた方法を採用すること。
アルゼンチンアリの場合はゆっくり効く薬をつかって時間をかけて防除するのが有効なのだそうです。
逆に、場当たり的に薬剤を使ってしまうと、アリを散らいて広めてしまう結果にもなってしまう。

生物の生態と薬剤の両方の知識を併せ持っている専門家のアドバイスが重要になります。

そして、薬剤を使って外来アリの個体数を十分に少なくしたあと、最後のとどめを刺すのはその回りにいる在来のアリなのだそうです。
1対1では外来アリの方が強かったとしても、多勢に無勢の状況では在来アリに太刀打ちできない。
とても興味深いエピソードでした。

昨年の夏、ヒアリの上陸が話題となりましたが、アルゼンチンアリ防除での経験をもとに落ち着いて対応すれば、拡大を防ぐことは十分に可能とのことです。


その他

クワガタムシとクワガタナカセ(クワガタに寄生するダニ)の共進化 両者の系統樹のシンクロ具合が素敵でした。

カエルツボカビのその後の話 日本のカエルには抗菌作用があった!!

五箇さんのダニLOVE❤エピソード

などなど、興味深く、おもしろいお話し盛りだくさんの1時間でした。

当然このブログ記事では書ききれない内容がたくさんありましたし、五箇さんのプレゼンの凄さも生で体験していただきたいです。
お近くで五箇さんの講演会を聞く機会がありましたら、ぜひ参加してください。




パネルディスカッション編へ続く



フェイスブック https://www.facebook.com/tottetaberu/
インスタグラム https://www.instagram.com/tottetaberu/
「いいね!」「フォロー」お願いしますm(_ _)m

とる食べ会員募集中です!
詳しくはこちら←クリック


【お問い合わせ先】
昆虫食倶楽部 夏目恵介
電話:090-9900-0928
メール:tottetaberu@gmail.com

関連記事